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牧山康志
国政のガバナンス広場
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賃金・年収、税、そして共同体・国 と生産性(4)財政破綻

  • makiyama@allgovern.com
  • 5月4日
  • 読了時間: 20分

更新日:6月1日

◎脱線 日々コラム8



 北海道夕張市は2007年に財政破綻しました。今また、合併(2006年)により北海道で最大の広さの市町村(面積1,427㎢ )となった北見市の危機が伝えられています。北見市の実情を象徴するような45Lゴミ袋10枚900円(1,350円に値上げ予定)などが取りざたされています。北見市やHTB北海道ニュースによると、2024年度では歳出768億円、歳入は774億円であるものの、歳入のうち25億円は基金からの繰り入れで次年度には枯渇するといわれています。広くなったことで、市道の人口1人当たりの長さは札幌市の6倍、体育館14カ所(札幌市と同じ数)や図書館8カ所(札幌市に次いで多い)など公共施設の維持管理・運営などが負担を大きくしているようです。

(北見市は人口11万2千人、札幌市は196万人)

 さて、こうした地方自治体の厳しい状況、その次は日本、この国自身の危機でしょうか。そもそも国や自治体が破綻するとはどのようなことでしょうか。

 最悪の事態を避けるために今回は破綻した自治体の情報を整理してみます。

 

 なお、日本政府は2024年末で1,105兆円の債務残高を抱え、この額はGDP比254.6%となり、世界でも類を見ない額です。多いといわれるイタリアでも139.2%です。借金返済に相応の国債費は歳出の24%、28兆円(2025年度予算)であり、消費税収24兆円を超えています。国家予算の10倍の額で2025年度も21兆円の公債発行見込みに至っています。

 ちなみに、ドイツを第二次世界大戦に追い込んだ要因ともなった第一次世界大戦後のべルサイユ条約で連合国から課せられた賠償金額1,320億マルクは当時のドイツの国家予算の20倍に相当したといわれています。今、私たちは国家予算の10倍の借金を自ら積み上げてしまいました。税収によらず、国の事業から得られる収入によらず、財源の担保なく公債を発行して歳出が積み重ねられた結果です。

 この先も首都直下型地震(経済損失予測 1,001兆円)や南海トラフ地震(同292兆円)など遠くなく訪れる大きな損失も待ち構えています。さらには就業人口減少のマイナス要因が増大することも推測されます。

 

 ところで、破綻の構図を単純比較はできないと思いますが、ギリシャが国として財政破綻してEU(欧州連合)の支援を受けるようになった際には、2012年末時点で、ギリシャ政府の債務残高は3000億ユーロ(約30兆円)と推定されていました(ギリシャの人口:1,041万人)。これはギリシャのGDPの152.7%に相当し、欧州で最も高い債務比率でした。ギリシャの債務危機は、2009年の新政権による財政赤字の発表がきっかけとなり、市場の不信感が高まり、国債利回りが上昇、国債格付けが引き下げられるという連鎖反応が引き起こされたことによるといわれています。

 一般的に、国債の格付けが低下すると、信用リスクが高まり、それに応じて利回り(金利)も上昇する傾向があるといわれています。しかしながら、日本国債の場合、格下げされても金利が上昇しない、あるいはむしろ低下するケースも見られます。これは、投資家が日本国債を安全資産とみなして買い続けているためと考えられています。すなわち、その理由(主に低金利政策と海外からの資金流入の2つの要因)として、日銀の低金利政策により、金利が上昇しにくい状況にあること、そして、金融市場に資金が供給されやすい状況が続いていること、また、日本国内の金融機関が大量の国債を保有していること、また、日本の経済成長力が弱いことで他の資産への投資が及びにくいことなどが挙げられています。

 

 しかしながら、日本経済新聞では、2025年1月26日 の記事で『日銀が24日に政策金利の引き上げを決め、長期金利は一段と上昇に向かう可能性がある。野党などが減税を求めるなか、海外の大手格付け会社からは国の財政悪化や金利急騰のリスクを指摘する声が出始めた。日本国債の格付けは主要7カ国(G7)でイタリアに次いで低い。すぐに格下げになる可能性は乏しいが、ひとたび現実になれば邦銀や日本企業の資金調達コストが増し、経済活動に影響が及ぶことになる。』と指摘しています。

 

 外から見れば財政赤字が明らかであるのに、財政を健全化するための計画が着実に実施されていない国家の様子はどう見えるでしょうか。世界中の人は当然、首をかしげることになるはずです。財政をさらに悪化させるような施策を打ち出すならば、それは愚かに見えるはずです。もし、国の中にいる私たちにそう見えないのであれば、客観的な判断を歪めてしまう、非合理的な力動が働くからではないでしょうか。恐らくそれは、選挙を意識した自己利益や政党利益が前面に押し出される力であり、多くの国民の今の厳しい家計の状態、そして、国民の政治への期待や関わりの乏しさであるように思われます。

 では、合理的な施策や判断を促す力は何でしょうか。それは他ならない国民の意思と選択の力と考えられます。すなわち、自らの意思のあり方や選挙などでの政治に対する意思表示の在り方であるといえます。 (ちなみに、外の目ということでは東日本大震災後には世界中の国々から物品ばかりではなく義援金も寄せられました(総額227億円、必ずしも豊かではないバングラデシュなどが含まれています)。)

 もし、一律な減税や給付だけではなく、弱いところに手当てし、かつ、財政の健全化を促すような施策を提示することができる候補者や政党があるならば、国民がそのような政党・候補者を支持すれば、自ずと目先の金銭的利得のみを提示して国の根幹を蝕む不合理(無責任)な施策は退けられ、かつ自己利益優先の政治家や政党は駆逐されるはずです。

 その名を知られた米国大統領のJFケネディが、就任演説において、「国があなたに何をできるかではなく、あなたが国に何をできるか」を問おうと訴えたのは、民主主義の本来の面を良く示す言葉ともいえると思えます。


日本の正味資産「国富」(対外純資産を含む)は2022年末で3,999.1兆円とされます(内閣府経済社会研究所)。つまり、1000兆円の借金をそのまま返すには国土・建物・資源・設備など一切を含む国富の1/4を当てる(情景は資産もろとも国土の1/4を売却する)のに相応な額です。なお、9072.1兆円の金融資産は、負債8,650.3兆円との間で相殺され、対外純資産は421.8兆円とされています。)

 




<休憩>





         富士をみる風景





 

 さて、政府・行政機関が破綻するということはどういうことか、日本における実例の状況をみつつ、その回避の糸口を見出していきたいと思います。

 実際に破綻した夕張市について、夕張商工会議所、伊豆市(厚谷司氏講演)、NHKなど参照しながら状況を整理してみました。

 

 はじめに、「夕張市の破綻」すなわち自治体の「財政破綻」とはどういうことでしょうか。それは夕張市が債務を返済できなくなり、行政サービスが正常に維持できなくなった状態を指します。結果、「財政破綻団体」に指定され、国による支援や再建措置が講じられることになり、現在は法改正に伴い「財政再生団体」として再建に取り組むことになっています。

 

 夕張市は北海道の札幌の東60㎞ほどに位置し、「夕張メロン」の産地としても広く知られています。かつての炭鉱の町であり、その始まりは1874年(明治7年)お雇い外国人・米国の地質学士ライスマンが夕張川流域に石炭鉱脈を指摘したことに端を発し、1888年(明治21年)再調査を契機に、1891年(明治24年)の炭鉱の開設以来繁栄が始まりました、炭鉱の町として繁栄した夕張市は、1960年(昭和35年)には北炭(夕張鉱業所、平和鉱業所)、三菱(大夕張鉱業所)の3大鉱業所を中心に、北炭機械工業(鉱山・産業機械製造)、北炭化成工業所(コークス・化成品製造)などの関連産業も発達し、多くの事業所が存在して、116,908人の人口を抱える都市となっていました。

 

 しかしながら、相次ぐ炭鉱災害及び、昭和40年代にはエネルギー変革(石炭から石油への移行)により、24の大手炭鉱が次次と閉山し、2005年(平成17年度国勢調査の結果では)、人口は13,000人と最盛期の約9分の1まで激減し、全国都市中人口激減率は第1位の状況でした。

 破綻の要因を整理します。

 

要因1)炭鉱の閉山による産業と人口の喪失

 こうした経緯で閉山跡処理対策に費やした費用は1979年(昭和54年度)以降16年間で584億円。2005年(平成17年度)人口1人当たりに換算すると、公債費は類似団体の約3倍の17万6,000円となりました。

 

要因2)行政体制の効率化の遅れ

 1960年(昭和35年)、人口ピーク時の最盛期に必要とされた市の職員数は615名でした。その後の閉山による人口の激減は到底想定でき得るものではなく、職員の定年退職での自然減と新規採用の調整等で行政体制の効率化を図ってきたものの当時としては人口に見合った職員数及び人件費の仰制が不十分となりました。

 

要因3)観光施設過大投資

 炭鉱の閉鎖後の産業基盤として、観光事業はポスト石炭産業として新たな産業創出の主軸となりました。そのために「石炭の歴史村公園」の整備に始まり、その後は、観光客の多様なニーズの応える総合観光を目指してホテルなどの宿泊施設の整備が図られました。狭隘な山間地域に閉山となった石炭産業が残した炭鉱施設や住宅が放置され、また、民間企業の進出が望めなかったことから、夕張市が自ら主体となって雇用の場の確保及び地域の振興のため、観光事業を推進した経緯がありました。確かに一時期は年間230万人の観光客が集まる時期もありました。

 しかしながら、進めてきた観光事業は長引く景気の低迷の中、本来、使用料等の収入により賄うべき経常経費及び施設整備に係る元利償還金に充てるべき収入が不足し、赤字運営となっていました。こうした状況にも拘わらず市は雇用の場の確保及び地域振興策の推進のための観光関連施設の整備(30カ所ほど、炭鉱労働者の再就職先ともなっていた)を進め続けて、マウントレースイ・スキー場など多額な投資を行ったことで債務の増大を招き一層、多額な赤字(観光事業で180億円相当といわれます)を抱える状況に至りました。

 

 

要因4)歳入の減少

 人口の急激な減少に伴い税収入がピーク時1984年(昭和59年度)比較で56.2% 12憶1,700万円の減、地方交付税は、1992年(平成4年度)以来、連続前年度を下回る状況で推移し、ピーク時1991年(平成3年度)比較で55.5%、38億8,000万円の大幅な減少に加え、2001年(平成13年)に「産炭地域振興臨時措置法」が失効したことに伴い、この間交付された「産炭地域臨時交付金」が廃止されたことによる歳入の減少、これら歳入減に対し的確な対応ができませんでした。

(「産炭地域振興臨時措置法」石炭鉱業の撤退は大量の失業者を生み,関連産業を衰退させ,人口を激減させ,地域経済に大きな打撃を与えたため、地域経済の活力を取り戻すために1961年産炭地域振興臨時措置法が施行され,工場用地造成など産業基盤整備,企業誘致,進出企業の税制優遇措置などが進められました。)


 要因5)財務処理手法の問題

 財政状況が逼迫する中で、4月・5月の出納整理期間を利用して会計間貸付金や償還金のやり取りを行い、そのための資金手当てを一時借入金により行うことにより表面上の赤字額を少なく見せる不適正な手法を長年繰り返してきたといいます。

 結果、実質的な赤字額は拡大の一途をたどり、こうした事態を防ぐ機能が働かなかったことが長年にわたり赤字額を漫然と拡大し、膨大な実質赤字額を形成することになったといいます。

 

 こうした要因により、2007年に夕張市が財政破綻したとき、市が実質的に負担しなければならない負債総額は632億円に上り、この金額は、2004年の市税収入 9憶7,000万円に対して65倍相当であり、地方交付税などで手当てする部分を除いた夕張市の解消すべき赤字としては、地方債残高を除いた353億円とされました。住民一人当たり280万円相当といわれます。

 夕張市の財政は現在でも厳しく税収が8億円に対して毎年26億円を返済するという計画が立てられています。

 こうなると、市の職員・議員の人員削減や減給はもとより、緊縮財政の中でサービスが削減される一方、住民は負担を増やされ、あたかも借金を返済するために居続ける、という状況が生まれます。市の職員数も1/3になり、市職員給料も全国1安くなって、人口減少も拍車がかかりました。

 

 さて、こうして再生団体になった夕張市ですが、再生団体はどのような立場にあるのでしょうか。法律では、財政再生計画については議会の議決を経て総務大臣に協議をし、その同意を求めることができるとされています。つまり、計画を策定するための議会の議決・公表までは義務づけられており、同意については計画を策定する側の任意ということになっています。

 しかしながら、総務大臣の同意を得ない場合は、災害復旧事業を除き地方債を発行することができなくなる、すなわち起債の制限を受けることとなります。また、同意を得た場合は、収支不足額つまり赤字額相当分を振替えるため「再生振替特例債」の発行や、その他の地方債の発行が可能となる仕組みです。

 すなわち、歳入以上の返済を求められている現在の夕張市が抱えた赤字額やその解消期間を考えると、国の同意なしには事実上財政運営が出来ないということになります。さらに、財政の運営がその財政再生計画に適合しないと認められる場合または、財政の再生が困難であると認められる場合には、予算の変更または、財政再生計画の変更など、国が市に対し勧告することができるとされています。

 

 次にこうした財政状況の中、住民への具体的な影響についてみてみます。

 計画の「基本方針」は、歳出においては、市職員の給与水準の引き下げや各種手当の見直しなどにより人件費の削減(17億円相当)を図り、また、住民生活に必要な事務事業費以外は原則として中止・縮小することとし、投資的事業は、真に必要な事業以外行わない(7億円削減)など巨額の赤字を解消するため事務事業の抜本的見直しを図るという内容でした。

 歳入においては税率・使用料・手数料の見直しによる増収(市民税・固定資産税、軽自動車税を全国最高レベルまで引き上げ年間1億8,000万円の増収)や、公営住宅使用料などの滞納対策による収入の確保を図るという内容です。また、第三セクター(政府または地方公共団体(第一セクター)が民間企業(第二セクター)と共同出資してで行う事業組織体(法人))として運営していた観光施設への出資の停止も行っています。(結果、引き受け手がなければ施設は廃止、運営会社も今までに複数が破産しています。マウントレースイスキー場は運営会社が替わり中国人オーナーの会社を経て現在は香港の投資会社(Great Trend (H.K.) LImited)によって取得され(株)夕張リゾートオペレーションによって運営されています。(日刊工業新聞))

 一方で、高齢化比率が全国都市の中で最も高い割合となっていることから、高齢者に配慮しつつ、また、15歳未満の年少人口の割合も全国都市で最も低い割合になっており、地域の将来を担う世代が健やかに育ち、学べる環境にも配慮しながら財政再建を取り組む内容とされているといいます。

 

 

<休憩>

 





         ある風景

 

 



 これまでに見た夕張市の財政破綻に関わる要因の中で、事態を悪化させたこととして、一時借入で多重債務を繰り返し、組織ぐるみで隠ぺいしていたことの重大さが指摘されます。炭鉱が閉鎖し人口が減少し、主要産業がない中で、国の補助金を使って観光産業に明日を託した夕張市において、使われない施設を作りすぎ放漫経営になって借金が膨らんでいた実情を、粉飾決算でごまかしていた、とされる点があります。

 そのため、こうした隠蔽をなくすために国は4つの指標を導入し、各市町村に報告させるようにしました。

 

 国の関わりを規定するのが財政健全化法(新法)です。

 財政健全化法成は 2007年6月15日に成立した新法「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(財政健全化法)」として制定されたもので、6月22日に公布、2009年4月1日から計画策定義務などに係わる規定が全面的に施行されました。

 これまでの「地方財政再建促進特別措置法(昭和30年)」に代わり、財政健全化法に基づく地方公共団体の新しい財政再建制度を整備して、収支だけでなく、病院、下水道など特別会計や第三セクターを含めた連結ベースで財政状態を把握することを目的としました。

 財政健全化法は「第二の夕張」を防ぐのに各自治体状況を早い段階から把握し健全化するために先に触れた4つの財政指標に基づき、いずれかの指標が基準を超えると夕張市並に国の管理下に置かれる「財政再生団体」や自主的な再建計画が必要となる「早期健全化団体」とする健全化判断基準が設けられたのでした。

 新たな4指標は(1)実質赤字比率「一般会計など」、(2)連結実質赤字比率「病院など公営企業会計を含む」(3)実質公債比率「借金返済額が財政規模に占める割合」(4)将来負担比率「借金残高が財政規模に占める割合」などなっており、それぞれ、外部監査を受けて健全化を図る「早期健全化団体」の基準と「財政再生団体」の基準とが設けられています。

 

 さて、こうした新制度下で財政再建への道を歩む夕張市ですが炭鉱の閉山後28年を経過して消費人口の激減により購買力の低下を招き、過疎化に拍車がかかり厳しい状況下にありながら、その中で、当市の産業経済も炭鉱から観光、メロンのマチへと着々とまちづくりを官民一体となって進められたものの、2007年3月6日に財政再建団体移行について総務大臣の同意を得たのは18年間に及ぶ財政再建計画でした。

 

 市政の組織機構の見直しとしては、簡素で効率的な組織体制とするため、2007年度から部制を廃止し組織統合を図り市長部局において当時5部17課30係体制を7課20係とするほか、5箇所の市連絡所を廃止し、支所の体制強化に当てました。

 職員数の削減は、普通会計に属する職員数は、2007年4月現在の269人から2010年度初めまでに人口規模が同程度の団体の平均を下回る134人とし、2011年度には103人となるよう職員の適正配置に配慮しながら、原則として退職者の完全不補充により削減が図られました。

 また、一般職給与の削減では、給与制度は地域給与制度の導入など国家公務員準拠を原則とし、給料月額を2007年4月から平均で30%削減することとしました。

 2019年4月1日現在、市職員124名(派遣職員15名含む)但し、消防職員40名を除く数となっています。

  

 借金の返済に取り組んだ夕張市は2025年5月4日現在で、返済額305億円、借金残高47億円までに漕ぎ着けました。なお、返済期限は2027年3月とされています。





 

 さて、国家の財政破綻への危機は迫るのでしょうか。そうした懸念の中、前記にもあったように、今、政治界隈では選挙を前にした減税キャンペーンの様相を呈しています(例えば食品消費税については、2023年家計調査において1カ月当たりの全世帯平均食費67,078円で世帯数5,419万世帯。食品の税8%として 消費税は年間計 3兆6,300億円 2年間やれば7兆2600億円)。しかし、これまでに累積1,000兆円越えの「減税」をしてきた上に、なぜ、今さらの追加減税が、国を救い得たり、選挙向け「キャンペーン」などになり得たりするのでしょうか。

 ここには現在の日本が抱える切実な貧困と、象徴的な無責任政治家、そして国民一人一人の政治への参画意識や選択における責任を自己が負っていることへの実感の不足などといった不思議な協働的ベクトルが働いているように思われます。かつて、戦争などすべきではなかったのに、なぜ止められなかったのか、そうした事態と重ね合わせた状況が見える気もして、大きな不安を感じます。

 

 ただしかし、戦前と現代のとの決定的な違いは、情報やその発信に係る制約のなさが全く違い、戦前のような誤った押し付け教育、国家主義・軍国主義的教育もされていません。私たちは選択できる立場にあります。財政赤字の実態(数字)も知っています。その中で、現状の心地よさ(それも保ちつつ)ばかりではなく、将来も考えた重要な局面・場面での厳しさへの心構えや可能な力を発揮して事態を打開する共同体意識も、今の私たちには求められているし、それらを備えた多くの人々もいるのだと思われます。そうした人々の力が政治に生かされていない、依然として透明性が確保されず、根拠となる適切な情報の提供もないままに、プロパガンダ的側面が強調されるようである姿には、政治家と国民との断絶を感じます。

 合理的・倫理的で国民の幸福を追求するような政治は、きちんと情報を共有し、それを見極め、真摯に率直に現実に向き合う姿勢が必要で、これらを欠いた時の不幸な結末という点は戦前・戦中の意思決定における欺瞞や誤りを積み重ねた致命的な失策にも通じるところがあると思います。


 

 ちなみにこのまま負債が残されれば、財政立て直しの将来的な主役になる可能性のある若い世代の意識調査を大阪維新の会が行っていて、それによると以下のような結果があります。

 

「選挙への参加以外に政治に関わることに関してどう思いますか?」

「ぜひ関わりたい」5.6%、「興味があり関わってみたい」12.9%、「興味はあるが難易度が高い」25.5%、「興味がない」33.2%、「絶対に関わりたくない」23.7%

(「若者の政治参画意識」に関する調査、2024年1月11日~1月16日、18歳~25歳、インターネット調査、調査人員 1,020人)

 関わりやすい道筋があれば、参画する意識は44%には認められるといえそうです。


 つまり、中間的専門機関として示したように、国民と政治とを橋渡しする適切な機関が置かれれば、国民の参画を広げ、国民との情報共有を促進し、より確かな政策を国民・政治の場の協働で生み出していく可能性が開けると考えます。


 私たちは、この国を愛おしく思うか、今は愛せないか、いずれかによらず、国の存続や、私たちの未来、あるいは将来世代の幸福な生活の基盤を残していきたいと多くの人は思っているのではないでしょうか。ならばこの先、可能な範囲でコツコツと対応していかなければならないと思われます。そして今、事態を直視し、意思決定し行動しなければいけない局面にいる、という気がします。将来のツケに残さず、処理を始めていかなければいけない覚悟が必要そうです。

 

 

 ところで、歳出を考えた時、夕張市が職員数を減らしたということがありました。特にコストの掛かる政治家の人員削減も一つの手段とされることが考えられます。政党によっては、例えば国会議員の歳費(議員報酬)の2割を自主カットして被災地や戦災地等への寄付に当てていたり、加えて、議員定数の3割カットを主張したりしています(日本維新の会)。(仮に3割減らすとすると議員定数削減で見込まれる削減額は213憶円(議員1人のコストを7,000万円と設定))。こうしてみると、2025年度には総額315億円(総務省)とされる政党交付金の額は、議員削減よりも大きな額であり、これが国民にとって優れた政治のためであれば良いのですが、それが単に選挙や政党の宣伝活動に使われる、というのであれば、全部とは言いませんが、かなりは無駄とも思われます。金と政治家との醜い関係はそれとして規制政策も含め管理・監視していかなければならないのですが、他方、このような資金こそ、本HPでも紹介している課題ごとの「中間的専門機関」の設立・維持などに、相応の額を回すというような活用法ができるのではないかと思われます。

 あるいはもちろん、議員の削減と政党交付金の削減とで国債費へ充当とすることも考えられます。


 国が豊かさを失わない(民間における順調な経済・好景気の)中で、歳出が80兆円に抑制できれば、毎年の新たな公債の発行はほぼ0で経過できるかもしれません。今の国債費を勘案すると、ざっと60年間*で支払い終えます(60年間無事に過ぎれば)。 確かに経済を上向かすことができればそれは良いですが不確定性があります。社会保障費を考慮すれば消費税15%以上が必要という専門家意見もあります。 社会保障費の合理的・倫理的な範囲での削減も考慮が必要ですし、増税ともなれば国の財政の逼迫状況をしみじみ感じることになりそうです。

 着実な返済手段と併行しつつ楽観するなら、将来を希望をもって見るなら、やはり日本から生まれる技術革新に牽引される経済の好転、社会全般に行き渡る生産性の向上、さらなる発展が重要で、そのための適切な予算配分が必須となりそうです。加えて相互支援(助け合い)社会の促進が国を救うと思います。

 技術革新を生まれやすくする土壌として何が必要か、こうした政策課題の検討は省庁に象徴的な縦割りではなく横断的で課題に特化した組織での検討が有益であると、考えられます。単に各省庁の出向者で成り立つとういようなことではなく、現場ともつながり、継続して調査を行い情報の収集蓄積発信を行いながら、国民とつながった政策を策定していく機関です。

 

 そうした機関を想定する際には、中間的専門機関の意義が想起されることと思います。




*:2025年6月1日書き換えました(従前「40年間」としていましたが実際の元金返済分が17.7兆円、金利が10.5兆円であることや、60年償還ルール(借り換えなどを繰り返しながら10年ごとに1/6ずつ償還するやり方)などを勘案しました)。なお、財務省は2025年1月時点で、2028年度予算における国債費を、経済成長率1.5%で34.8兆円(利払費15.5兆円)、成長率3.0%で35.3兆円(利払費16.1兆円)と見込んでおり、2025年度の28.2兆円からさらに大きく増大することを見込んでいます。特に利払費の増大は今後の深刻かつ重大な財政要因と思われます。現状の歳出では税収の増大あるいは増税なく切り抜けることはできないものと考えられます。

 

 
 
 

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