HFEA 英国の機関(3)
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- 3月18日
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第9回
(4)HFEAの評価
関係者の間では、HFEAは総合的に、完璧とは言わないまでも極めて有効に機能していると評価されています。一方、管理を受ける研究者側も、科学技術が社会的に受容された状況の中で行われるのは必定のこととして、これに伴う手続きの必要性を理解しています。特に国家予算を使う研究の場合は、納税者との関係において当然であるとの認識が見られていました。
以上、述べてきたとおり、HFEAは、生殖補助医療・ヒト胚研究の規制・管理における責任と権限とを有し、社会とのパートナーシップの形成・維持に勢力を注ぎつつ当該事項の苦情、問題処理も一手に引き受ける、問題指向的かつ包括的に当該問題に責任と権限とを有して対処する専門的な機関であるといえます。
その意義について、一例として、英国政府首席科学顧問兼英国科学技術庁長官であったキング(David King)氏は、2002年4月に来日した際の講演において、科学技術政策における新たな政策的枠組みの先駆的成功例として、HFEAに言及しました。
(5)HFEAと同様な機関の例
1)ヒト組織管理機関(Human Tissue Authority, HTA)
2003年Human Tissue Act 2004が議会で成立し、その中にHTAの設立が盛り込まれました(Part 2)。HTAの機能はHFEA同様、ヒトの臓器・組織・細胞利用における許認可、実施規範の策定、公衆に当該研究に関する情報や助言を提供すること、モニタリング、閣内相への助言などです。同機関は、HFEA同様、閣内相に任命される議長や委員から構成され、やはり、半数以上は非専門家で構成されることを要求しています(Schedule 2)。
このように、ヒト組織の取扱いのあり方を規定したHuman Tissue Act 2004と、管理運用機関であるHuman Tissue Authority の設置は、法律と当該の中間的専門機関から成る制度の英国における普遍的適応発展の兆しであるといっても言い過ぎではないと考えます。
なお、当時、ヒト臓器、組織、細胞に関する法律(Human Tissue Act 2004)の成立により、ヒト組織管理機関(Human Tissue Authority)が設立され、HFEAと同機関とで、双方が関与する共通領域が存在するため、Regulatory Authority for Fertility and Human Tissue(RAFT)の設立が構想されていました。
2)フランスの生物医学機構 (l‘Agence de la biome’decine)
フランスは1994年にヒト胚に関する厳しい保護的立場を含む人体組織利用に関する法律、いわゆる生命倫理法を定めましたが、その法律の改訂(2004年7月憲法院判断)では、移植,生殖補助医療、発生学及び遺伝学の領域を管轄するものとして「生物医学機構(l‘Agence de la biome’decine)」という公的施設を設置するとしました。静的な(書き込まれた)規制様式の法律やガイドラインに加えて、動的な運用を担う機関の役割の必要性、有用性を示唆しているといえます。
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