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牧山康志
国政のガバナンス広場
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ガソリンと税

  • makiyama@allgovern.com
  • 3月2日
  • 読了時間: 6分

更新日:3月2日

◎脱線 日々コラム4 


現在、国会の予算審議に際して「ガソリン暫定税率の撤廃」といった文言がみられます。ここではガソリンと税について財務省や石油業協同組合の資料をもとに整理してみました。


 まずは、この「暫定税率」はもともと道路整備のための特定財源として、ガソリン税の28.7円/L(1L当たり)に追加して25.1円/L が加算されたもので、制度としては、2009年4月までで廃止となり、その後は、一般財源として暫定税率が課されてきました。

 ガソリンにはこれらガソリン税として53.8円、そのほか「石油石炭税」が 2.04円、「温暖化対策税」が0.76円課されています。そして、これらに消費税 10%(2019年10月より)がかかりx1.10の価格となります。

 つまり、現在のおよそ180円/L のレギュラーガソリンにあてはめるとガソリン本体価格は107円ほどで、ほか(約73円分)は税金の計算です。

 こうした石油関連の税収は年間4兆円となるそうです(揮発油税 19,760憶円、石油石炭税 6,010憶円ほか)。これが総額115兆円の歳入の一部を支えることになります。

 

 さて、日本では税金が4割ほどを占めるガソリン価格の状態を国ごとに比較してみるとどうか、というと、財務省資料では2023年時点においてOECDに加盟の35か国の中で日本は米国に次いで価格の安い第34位でした。つまり、本体価格(産油国かそうではないか、輸送距離はどうかなど)もありますが、それ以上に各国の税金の額の影響が大きく、日本は比較の中では安い方なのです。


 おそらく問題は、現在のようにガソリン本体の価格が上昇したときにどう対処できるか、また、自動車の保有の有無によらず、日本における賃金の低さ・家計の貧しさのなかで、それに対して国はどのような対応ができるか、ということだと考えられます。

 一時的に歳入が減ったとしても/ほかの歳出を削ってでもやらなければならないことは、ガソリンに関連してでは、何でしょう。

 ガソリン代の高騰で操業が立ち行かなくなるような中小の企業を支援することなどでしょうか。もしそうであるなら、そのことにターゲットして支援すべきです。


 現在、経済産業省・資源エネルギー庁では燃料油価格激変緩和補助金によって価格の「激変」に対して小売価格の抑制のための燃料油元売り業者(石油精製業者・石油輸入業者)への手当の制度があります。これは2022年1月に始まり、当初は平均小売価格が170円/Lを超えた場合に適応され、現状は徐々に基準が段階的に見直されていますが、2025年2月27日~3月5日の期間については、12.5円の支給額となっています。結果、この補助金政策で5兆円以上が支給されたといわれています(SOLAR Journal、2024年7月時点)。あるいは、燃料価格の負担軽減策には、これまでに8兆円以上の予算が計上されていて、政府は、今後も状況を見ながら段階的に見直していくといわれています(NHK)。


 他方、個人に対して、「電気・ガス料金負担軽減支援事業」があります。

低圧 2.5 円/kWh、高圧 1.3 円/kWh、都市ガス10.0 円/㎥ (家庭及び年間契約量1,000万㎥未満の企業等が対象)といった値引き制度です。


 ガソリンを使用する人の負担を軽減する措置は歳入を減らし、他方、現状においてもガソリンの価格抑制に多大な費用を費やしている状況にあるといえます。歳入をへらすなら歳出も減らす、ということで考える必要があります。

 個人的にはそもそも財政的余裕のない中での施策は歳出においてターゲットを明確にした対策の検討が必要かつ有意義な印象を持ちます。


 今後もう少し広く、エネルギー価格の高騰が与える影響については考察したいと思います。



 日本は産油国ではありませんが、500mlのペットボトルの水が110円、1L分で220円です。2Lのボトルで買えば水は65円くらいでしょうか。果たしてガソリンは高いのか、安いのか。かつて、東日本大震災の後にガソリンの節約のために高速道路を80㎞/h で並んで走行していたのを思い出します。

 



◎今回のテーマを俯瞰して思うこと:

 漠然と、税を減らせば何か良いことがあると期待するのは、もう、これまでに長らくやってきたことです。つまり、税を増やす以上にひたすら支出して1000兆円越えの赤字の累積を抱えて、次世代に借金の先送りをしてきたわけです。

 無駄な歳出は無駄だったと、政策が失敗だったら、失策だったと、明らかにしなければ進歩は得られません。それゆえ、費用対効果は明瞭・截然としていなければならない、と考えます。暫定税率をなくすと何が良いのか、その分、何の歳出を減らしてバランスをとるのか、それが全体として国民のどのような利益になるのか、そのことを明確に示してこそ責任ある政治の態度であると感じます。


 国が何かをする、ということの主たるものは何らかの歳出を伴うということであり、それは当然ながら、歳入があってのことです。

 歳入が減れば歳出も貧弱になる、ということです。では、どのように貧弱さを避けた国政が出来るでしょうか。結局のところ、適切な順位付け、最適な配分をするしかありません。しっかりした根拠のある配分です。

 歳出は常に重要度・優先度によってA/B/C/Dランク・優先順位をつけること、そして、予算の請求額は、最低でもこれがないとどうにもならない額の範囲と、できればここまでやりたいという要望の範囲とで線引きをするしかありません(E/IP)。予算なのですから、翌年度は実績も踏まえてまた作成していく、そうした「当たり前のこと」を積み上げていくしかありません。

 

 政治は社会技術です。弛まぬ検証と挑戦との繰り返しの中でタフになっていかなければならないと感じます。政局がどうこうの話の先に見える風景は「誰が」よりも「何を」であり、政党の真価は合理的な(根拠のある)優れた政策をどれだけ打ち出せるか、にあると考えられます。それは単に何かに予算をつける、ということの一線を越えて、その政策によって何が得られるかを見極め、もし、政策が実現したらその効果を実証しなければなりません。そしてその評価において政策はこの国を理想に近づけるものでなければなりません。

 それを実現するための制度的裏付け・基盤を固めていくことが必要であり、それが国政のガバナンスであり、制度設計の重要性だと考えます。

 

 この国政のガバナンス広場では、中間的専門機関の重要性を説明していますが、その仕組みの中には、もっぱら政策が思惑通りの結果に結び付いているかどうか、運用の具合を監視する独立機関の存在が想定されます。いわば、会計検査院のようなものです。評価することに専らに存在意義を有する、そうした機関が、NPO等民間(いわゆる政治のウォッチャー)のみならず、政府においても機関として存在することが必要であると考えます。


 
 
 

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