夫婦の氏 原則と例外と選択
- makiyama@allgovern.com
- 2月28日
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◎脱線 日々コラム3
夫婦の称する氏について、これまで慣れてきた制度と「家族の一体感」が一致している面もあって、それは夫婦同姓の意義でもあるように感じます。
とはいえ、アンケート調査では別姓を希望する人が2~3割と、かなり大きな割合であることが示されていますので、やはり、別姓も選べることは支持されると思います。
ただその場合に、どちらでもいいですよ、というよりは、「原則」があった方がこれまでの慣習を踏まえれば、自然に移行しやすく思います。
以下のような法改正案で考えます。
●夫婦の氏
一 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は相応な事由を有する場合において各自の婚姻前の氏を称するものとする。
二 夫婦が婚姻前の氏を称するに相応の事由については別に指針で示す。
三 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。
以上が法案ですが、本法律に定める指針においては以下の点を記載します。
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「夫婦が婚姻前の氏を称する事由に関する指針」
夫婦が婚姻前の氏を称するに相応の事由について以下のとおりである。
①「契約上の不利益」:改姓により契約・手続き上の不利益を得る場合。
②「キャリアの維持」:改姓により研究キャリアの分断や社会的地位、知名度などにおいて不利益を得る場合。国際機関等での勤務もこれに相応である。
③「選択の不合意」:夫婦のいずれもがそれぞれの氏の継続を主張して合意が得られない場合。
④その他、夫婦が個別的な事由によって希望し婚姻届けを受理する自治体において妥当と判断された場合。
上記④について各自治体は研修を受けた(*)一名以上の者を夫婦別氏に係る研修修了者として任命し、事由の当否の判断が必要な夫婦別氏の申請があった場合に、その判定を行うものとする。なお、申請者はその判定に対し、首長宛てに不服を申し立てることができる。
*研修を受けるとは法務省の作成した研修ビデオを視聴し、視聴後の設問に正しく解答することをいう。
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上記のとおりで、「例外的夫婦別姓」に相応な選択肢となりますが、婚姻届けでは簡単な記載で済めば、「選択的」と大差はないと思います。大きな違いは、「原則」を有することで、これまでの慣習を踏まえて、制度としてより安定感があって、私たちの社会においてはわかりやすい結果をもたらしてくれることが期待できると考えられるのが異なる点です。
なお、婚姻届けに際して婚姻前の氏を称する場合には、事由に該当することをチェックボックスに明示し、事由について指針の①~④を参考に記載する欄を設けることで対応します。
形式上「例外的」とはいえ、不都合なハードルは無いと思います。
なお、事由を指針で定めるのは、時代の要請や制度施行の経験などから、事由の変更や追加が必要になる可能性があって、法律よりも柔軟に取り扱えるようにするためです。
ちなみに、日本の戸籍の歴史は飛鳥時代の645年の「大化の改新」で戸籍が制度化され、670年に「庚午年籍(こうごねんじゃく)」と呼ばれる戸籍に相応の文書が作成され永久保存とされたようですが、現存せず、戸籍としての調査・記載の範囲もわかっていないようです。その後、豊臣秀吉の太閤検地に伴うものや江戸時代の制度などがありますが、近代的には明治以降の制度化された戸籍(1871年・明治4年の戸籍法に基づき明治5年に作成された「壬申戸籍(じんしんこせき)」)に始まり、昭和23年から現在につながる戸籍法での法制化がなされたといわれています。
2023年の日本における婚姻数は47万4717組(厚生労働省)であり、1日当たりにすると、1,300組ほどになります。
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