情報の収集蓄積と関心ある市民の参画
- makiyama@allgovern.com
- 1月26日
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第2回
(1) 情報の収集と蓄積
政策を策定し、その案が議会や公共の場において議論の遡上に乗るためには、議論・検討に参加する人々の間に正確な情報が伝達され、また共有される必要があります。そのためには、第一には情報が広く深く適切に収拾され、かつ、それが蓄積されていくことが必要となります。第二には、蓄積された情報が公開されたり、適切な形で論点に関わる情報として整理された上で伝達されたりするなど、透明性・公開性、現実的・実効的なアクセスのしやすさ、あるいは適切な広報が必要です。第三には、そうした情報共有を基盤として課題に関わる議論が、関心を持つ人々あるいは、公共の場において広く多くの人々に呼び起こされ、課題として共有されることです。これにより国政に先立ちあるいは平行し、議論や検討がより深さと広がりとを増すこと(民主主義的な意思決定の土壌が醸成されること)。そして、そのような場でさらに必要とされる情報が浮き彫りにされ検証されたりすることがより良い政策を生み出す糧となると考えられます。
上記のような情報の収集と蓄積とに係る事項を実現するためには、課題についての調査研究機能を有する組織(継続的な情報収集、蓄積、分析)とそれらの情報を検討の場・公共に提供する手段を用いた広報・情報提供の実施を主導する機関が想定されます。これまで官僚機構において、一人・二人あるいはそれ以下の人数で担当していたような課題、ようやく課題の領域について理解が深まったころには移動してしまう人事についても、人も機構も継続することで、より良く情報を収集・蓄積・アクセス可能にすると考えられます。
加えて、そうした機関が十分な能力を発揮するにはどのような情報をどのようにして集めなければならないのか、それはどう分析されそのことで、どのように方針が決められていくのか、といった方針を適切に生み出す専門家集団が必要となります。専門家と市民とが一体となって、政策を練り、国家の意思決定の場に提示するのです。同時に、こうした機関自体が、広報活動を行い、また、必要に応じたガイドラインの作成を行うなど、当該の課題におけるガバナンスに関わることになります。
(2) 関係者・関心を持つ市民が参加できる議論の場
社会には様々な課題が出現します。それらを解決し、次のステップに進んでいくことが常時求められる政治の役割です。ある特定の課題を解決させるシステムが整備されてその後もそのシステムを活用しながら課題への対応、解決に係る法の運用が継続して担われることになる場合がおよそ想定されますが、他方、一部の課題については解決をみてそれで終了となる場合もあると思われます。いずれにしても課題ごとに必要とされる機関(中間的専門機関)は課題が存在する限り常設されていることが重要です。先にも触れたとおり、政府が対応する重大な課題は様々に変化し、そうした中で例えば東日本大震災やコロナウイルス対応は政府がエフォート(力配分)のバランスを変えてでも注力しなければならい顕著な事例です。
しかしながら、その他の課題も取り組み続けられなければ政治は停滞・空白を生むことになります。それゆえ、政府が取り組むべき課題はいずれもが常にその場に様々な意味においてアクセスできること、あたかも中央官庁が恒常的に誰の目からも見える存在であるかのようであるのが政府のあり様ともいえます。
どれほど個別的で小規模な課題特化型の機関であったとしても、その存在が誰の目にも明瞭に見えていることが必要であるのです。そのことで、その課題に関心をもつ市民あるいは、その課題の解決やそれへの政策的な対応を願ってやまない人々がいつでもその課題、そしてその課題に関わる政策や関連領域、あるいはその政策決定の枠組みに参加できるということが日常になるといえます。こうした仕組みが当然のように存在している社会となれば、人々も当然のように政治に適切な形で参画することが自然なこととなる基盤が形成されることになるといえます。
社会に存する課題に取り組むための「場」・機関は、一般的には政府によって設置される場合もボトムアップに成立していく場合もあるといえますが、一方で、それが政策と結びつく機関である以上、何らかの形で公的に位置づけられていることが必要になります。すなわち法的に位置づけられる機関ということになります。その上で、このように特定の課題について市民が関わる場合の「場」・機関が明確に常に存在していれば、市民は関心ある場面、必要な場面で、そこにアクセスすることで、必要な情報を得たり、参画して、政策過程(策定や実施の場面)に関りをもつことができます。
これが選挙という手段に加えて、選挙がもつ限界とは全く異なる過程での民主主義の手段・スタイルの一つを与えていると思います。このような政治参加・参画の場となる機会が明確化された機構が増すごとに主権はより力を持つようになると考えられます。議会制民主主義を支える基本骨格の構造の一つとなります。
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