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牧山康志
国政のガバナンス広場
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賃金・年収、税、そして共同体・国 と生産性(3)消費税議論

  • makiyama@allgovern.com
  • 4月26日
  • 読了時間: 8分

更新日:7月11日

◎脱線 日々コラム7 


 消費税の税率引き下げが話題です。

 既に予算については国会の議決が済みました。期待される歳入が無ければ、歳出も減らさなければなりませんが、果たしてそうできるのでしょうか。


 まずは、一国民として冷静に合理的に状況を見てみましょう。

 今、私たちが国民の生活を守るために、物価上昇に対抗する低所得者対策が必要である、というのが政策として求められていることです。

 一方消費税は、小学生でもキャラメルを買えば支払ってくれる国民の尊厳に満ちた税の支払い方法です。この国で生活していれば国民誰もが支払う平等な税です。


 このような所得の多寡に拘わらず支払う税金を減じている余裕は、今の日本にはありません。その点はいわゆる「年収の壁」問題の解決方法を基礎控除とすることが、所得の多い人ほど恩恵の額が大きくなるという矛盾(的外れさ)を包含していたことと同じです。

 控除額を増やすのではなく、低所得者の救済には低所得における所得税率を変えれば良く、0%の範囲を拡大することも含めて、より確実に低所得者層にターゲットすることが求められています。


 所得の多い国民が多くの税を支払う再分配は必要かつ崇高な人類の信念に基づいているものと理解します。特に、日本の窮状をどうにか持ちこたえるためには、必要な時には支援を得られ、余裕のあるときには社会を支えることである点は、間違いのないことだと考えます。

 例えば、所得税40%支払うということは粗い表現をすれば、250日の労働のうち、100日は国家・社会への奉仕活動(無償の労働に例え得る)ともいえます。尊厳ある崇高な共同体意識の顕れともいえるものです。望むか望まないかは別にしても、実情として、自らが支えることで所得が少ないとき支えられる仕組みを、あるいはそのような状況にある人が支援を受けることが出来る仕組みを可能にしている、それが幸福度を維持できる国の姿であると、理解しそのような社会のルールを受け入れている、といえるのです。

 周知のとおり、所得税は収入に応じて決められています。したがって、所得の少ない人により大きな恩恵が必要であるときには、低所得者の所得税が軽減されればよい、というのが自然な考え方に思えます。

 

 2025年の予算案(歳入見込み)では消費税24.9兆円、所得税22.6兆円、公債費(借金)21.8兆円、法人税19.2兆円などとなっています。

 見てのとおり、未だに公債費を0近くにはできていません。そうした状況下では、特1%層の所得税の額を減らすのであれば、所得税の中で均衡をとる、すなわち、高所得者の所得税を増やすしかないことになります。問題は、低所得者の数が多く、高所得者の数が少ない、ということです。

 

  (厚生労働省)

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 2022年には世帯数総数は 5,431万世帯でした。

 所得200万円未満の世帯数は21.5%、1,167万世帯となります。


 ここからおよその目安を知るために、実際の所得税率と上記のグラフの区分けとの違いの誤差を容認して粗い計算をすれば、以下のようにいえます。

 これまでのブログではここで「税収」/「労働の対価」の一定割合として計算をしていましたが、実際、労働の対価としての所得として、1%、すなわち、「2.5日分」の労働としての所得に相応な額と、税収との関係が、不明瞭なままの計算で、一部、実情と乖離や表現の齟齬があるといえるので、一旦、試算は削除します。(以下<>内部分に説明を追加しました。(2025年7月11日)


 <所得200万円未満の世帯の所得税額は上記の数値と税率とからここで課せられている5%の所得税率を0%にします(「1,000円 から 1,949,000円まで」)。さらに、200万円以上300万円未満の10%税率が8%まで低減(「1,950,000円 から 3,299,000円まで」。 次に、これらの減額分を現状の所得900万円以上の1%分の税収で調整(これで、税収としては、およそ2,000億円程度は確保できます☆)。(この試算について、仮に所得1000万円、所得税の実際82.7万円/年 で所得900万円以上の世帯数830万世帯とすると国の所得税収としては2,000憶円ほど、財務省は所得900万円以上の人で株収入などを除けば1,500億円ほどとしているようです(NHK)。(ちなみに所得税収全体が19.9兆円ほど)。本編における記載においては、所得900万円以上の人の国の「所得税分の1%」1,500億円~2000億円、しかしながら、ここで表現してきたとおり、この830万世帯の2.5日分(1%)の労働対価(年間250日労働とみなしました)としては、仮に1,000万円の年間の所得とすれば、830万世帯で83兆円で、その1%は8,300億円(それ以上)となります。このように「所得税収」としての表現と「2.5日分の労働の対価」としての表現とが混在していました。(2025年7月11日)>

 

 減る税があれば増える税がある、先に述べた通り、再分配の調整は避けられません。

 政策の実施に際してはさらに精密な試算・そのための情報が必要ですが、おおよそ可能な範囲の改定であると見込まれます。


 ちなみに、年収200万円での現状の手取りは161万円、月額13.4万円とされます。単身者の平均的な家計としては:家賃:約3万4,000円、食費:約3万8,000円、水道光熱費:約1万2,000円、交通・通信費:約1万8,000円と、基本部分がおよそ10万2,000円となり、その他の支出を想定すると日々の節約が大切となりそうです。ところで、この状況での食品購入で支払う消費税額(8%で計算)は月に2,814円となりますが、先の所得税減税の月当たり効果は年収200万円、所得額132万円として計算すると、月当たり5,500円(年間6万6,000円)となるため、消費税率を下げるよりもより、大きな効果が得られていることが分かります


 いずれにしてもこれ以上増税の痛みを増やさずに、かつ、公債費を減らしていくためには歳出の削減や、根本的な経済の立て直しが不可欠であることになります。


 さて、日本における税負担を考えるに際して、財務省の資料に「国民負担率」の国際比較があります。

 比率的には日本の税など公的な負担率は平均的な印象ですが、国民一人当たりのGNI(2023年・GLOBAL NOTEを参照)から手元に残る額として算出して見てみるとことにします。


諸外国における国民負担率(対国民所得比)の内訳の比較 (財務省)


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<財務省の国民負担率に係る図において>

(注1)⽇本は令和3年度(2021年度)実績。諸外国は、OECD “Revenue Statistics ”及び同“National Accounts ”による。(注2)租税負担率は、国税及び地⽅税の合計の数値。また、個⼈所得課税には資産性所得に対する課税を含む。(注3)⽼年⼈⼝⽐率は、⽇本は総務省「⼈⼝推計」、諸外国は国際連合"World Population Prospects 2022"による。(注4)四捨五⼊の関係上、各項⽬の計数の和が合計値と⼀致しないことがある。



 単純に上のグラフの比率から残る比率分と、国民一人当たりのGNIとを掛けて計算した「名目の手取り額」では、米ドルで、日本18,649、米国53,068、英国25,619、ドイツ24,730、フランス14,490、スウェーデン25,870

 フランスはかなりの額を公的な資金に回しているとわかり、他の国々は、もとの一人当たりGNI額が髙いために、手取りの額が日本よりもだいぶゆとりがあることが分かります。

 

 さて、上記の国民負担率の項でみる英国・ドイツは手取り25,000米ドル程度、すなわち日本円で360万円程となり、まずはこの程度の額をGNI目標であるといえそうです。ちなみに転職サービスdodaによると、正社員の年収の中央値は380万円。この額での手取り301万円、月額25万円ほどとなります。単純計算上は先にみた単身世帯の家計に照らしてもこれが手取り360万円となればかなり余裕がありそうです。

 (なお、今、関税で揺れるというより揺さぶっている米国は、比率だけをみれば再分配や社会サービスが進んでいないだろうと見えますが、一人当たりのGNI は日本の2倍を超えており、額面では大きな額になります。その点、再分配や社会サービスの不足などの国内事情が、貿易問題に転嫁されているかどうかは、別に検証が必要です。)


 この先日本では、産業の活性化、現在、過疎化が問題になっている地域において農地の統合と後継とで若い力の活用の場を開拓したり、良い技術を持ちながら経営の困難に陥っている中小企業対策では、場合によっては統合して独立法人のような民間経営と公的資金との協働化をするなど、国策としての対応が根本的に必要な印象を持ちます。


 日本は高齢化・人口減少先進国です。いずれも地球規模・人類として考えれば、決してマイナスのことではなく、長生きすること、地球の環境・資源の負荷を減らすこと、これらは、長期的にみれば今後望まれることとも言え、この過渡期をどのように乗り切り、その後の持続可能で、現在よりもより光の差す未来にどうつなぎそれをどう築くかが、正に、今の私たちに委ねられている、ということだと思います。

 その意味で、しばらくは楽しむことと忍耐を持つこととの双方のバランスをとること、そして未来を見通す視点を持ち続けること、これらが必要となると思われます。そこのところは国民皆に共通といえると考えます。


 私たちがより良い国を創る(あるいはどのような国を創っていきたいか)、そうしたことへの強い関心、意志・動機をもてば、忍耐すらも生きがいになることを願いたいところです。そのためにも輝く未来を見通せる確かな道筋が見えることが必要なのだと考えます。その道を提示すること、それは現在の日本の政治に託された極めて重要な役割です。

 そしてここでいう「政治」とは、国民が行う政治であり、かつ、政治家に行わせる政治であり、その道はプロパガンダなどではなく、将来に向けて国民を幸福に導く確かな道を築くことなのです。


 以上、低所得者層の救済のための施策として、政策的には所得税率の改定で、低所得者層の負担軽減と高所得者層のさらなる支援の拡大によって歳入の増減を調整する施策が考えられる点について整理してみました。



(なお、所得税率0%では税を支払う国民らしさが失われる、というのであれば、0.1%としてもよく、議論をすればよいと思います。ただし、消費税がある現在において平等な税負担はすでに存在している、といえます。)

(図を更新して一部数値を変更しました。論旨に影響はありません。 2025年4月27日)

(再分配に関係する部分で一部、内容を修正しました。2025年6月18日)

 
 
 

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